もしあなたが食品過敏症やアレルギー、自己免疫疾患、IBD(炎症性腸疾患)やその他のリーキーガット症候群に悩まされているなら、Nightshade(ナイトシェード)と呼ばれるナス科の野菜が悪さをしている可能性があります。
ナス科の野菜は、ほとんどの人には健康的に全く問題がありませんが、中には、それらの野菜が小麦や乳製品が引き起こすような健康悪化の引き金になってしまう人もいます。
ナス科の野菜が引き起こしているであろう症状には、以下のものがあります:
● 消化器系の問題(下痢、腹痛など)
● 口の渇き
● 意識の混乱
● 嘔吐
● 視覚障害
● 肌の赤み
● 関節痛
一方、「ナス科の野菜」とは以下のようなものです:
● ナスビ
● ジャガイモ
● ピーマンやパプリカ、しし唐、唐辛子
● トマト
● ゴジベリー(クコの実)
● タバコ
● オクラ
ナス科の野菜の何が問題かというと、それには「糖アルカロイド(glycoalkaloids)」と呼ばれる天然の ”農薬” が各植物に含まれていることにあります。それらは豆や小麦のレクチン(これも捕食者に悪さをする毒)のように、虫やウィルス、バクテリア、動物やヒトから守る植物の最初の防御網として存在しています。
例えば、ジャガイモが土からちょっと出て芽を出すと、その皮の部分は日光を浴びて緑になりますよね。それを、鹿が見つけて食べようとしますが、その芽と皮には「ソラニン」という猛毒が集まっており、食べるとまず味が苦いので、「ペッぺッ!!」となって立ち去っていきます。そうやって、植物は自身を守るために毒を蓄えるようになったのだと考えられています。
ちなみに、多くのアルカロイドは他の生物に対して有毒で、しばしば薬理作用を示し、医薬や娯楽のための麻薬としてや、幻覚を伴う宗教儀式において使用されることもあります。例えば、タバコのニコチンもアルカロイドですし、単一のアルカロイドとして初めて分離された物質は、ケシから抽出されたモルヒネです。(1804年)あと、コーヒーのカフェインもアルカロイドの一つなのは面白いですね。
では、これらの毒素は実際体内でどのように作用するから悪いと言われるのでしょうか?
糖アルカロイドは、体の細胞膜のコレステロールを攻撃します。コレステロールは体の細胞膜が物を通し過ぎないように、くっついて強化してくれている良いものです。コレステロールなしには、細胞膜は悪い分子をシャットアウトできません。アルカロイドはそこをターゲットにして攻撃するので、細胞は壊れたり漏れてしまいます。これが、ナス科の野菜がリーキーガット、ひいては潰瘍性大腸炎やリウマチなどの自己免疫疾患につながっていくプロセスです。
ただし、ナス科の野菜は炎症をゼロの状態から起こすのではなく、元々ある炎症をさらに悪化させるようです。
糖アルカロイドの仕事は「捕食者の細胞膜にダメージを与える」ことである
糖アルカロイドの毒は、体がそれを体外に排出するのに時に1日以上など、かなりの時間がかかります。ですから、それをもし毎日ガンガン食べていたなら、この自然毒は体内にどんどんたまっていきます。そしてこの毒は、一日でどうこうなる毒ではなく、長期間摂取していくと症状となって出てきたりします。
それでは、各野菜を見ていきましょう。
1.ジャガイモ(ソラニン)
ジャガイモのソラニンは、ナス科の野菜で最も毒性の強いものです。日光を浴びて緑色になったり、芽の出たジャガイモは、もったいないと思わずに捨ててください。
食べると、苦く感じたり、口の中が燃えるように感じる、また症状としては吐き気や下痢、熱や頭痛、意識の混濁、最悪な場合は昏睡状態や死亡に至る場合もあるようです。
しかし普通、ジャガイモを含めたナス科の野菜では、人体が許容できる範囲内のアルカロイドぐらいしか含んでいません。ですから、一度に同じものを大量に食べるとか、毎日それだけをせっせと食べる、などしたとき以外は、急性的なソラニン中毒は稀、ということです。(ただし、慢性的な体内の微細炎症【リーキーガット】は見えませんが)
そうでなくても、私は基本的にジャガイモは糖質が高くて栄養価が低く、あまり健康的な野菜だとは思っていないので、ナス科の野菜は特に問題ないわ、という人でも、食べるならサツマイモの方が害もなく栄養価も高いので、そちらを代替にお勧めします。
また、ジャガイモを食べる場合には、以下のことに注意していただきたいと思います。
- アルカロイドはその皮に最も含まれているので、調理前にジャガイモの皮をむくと、アルカロイドの70%はカットできる。
- ポテトはオーブンで焼く方が、茹でたり蒸したりするよりもアルカロイドの量を減らせる。
- ジャガイモは、光に当たると緑色になったり芽が出てアルカロイドも増えるので、食べるまでは冷暗所に保管する
2.トマト(トマティン)
トマティン・・・まず名前がなんともかわいくて、一人ツボりましたが(笑) トマティンは、植物全体に含まれており、実よりも茎や蔓の方によりアルカロイドは含まれているそうです。実も、青いトマトから完熟トマトになるにつれて、糖アルカロイドの量は100分の1にまで減るということです。ですから、まだ青いトマトは食べるな、ということですね。
3.ナスビ
「ナス科の野菜」というからにはナスビは当然入ってきますよね(笑)
これも、ジャガイモと同様、ソラニンが悪さをします。だいたい一つのナスビに、11㎎のソラニンが入っていると言います。この強力な糖アルカロイドは実や皮、種などナスビ全体に含まれています。
ソラニンの含有量は、日本ナスビはそれほどでもありませんが、イランナスビは比較的多く、人によってはヒ素や猛毒のストリキニーネのような反応を引き起こすようです。(消化器系疾患、意識混乱など)
また、昔からなすには、体を冷やす効果があると言われていました。これはカリウムの含有量が多く利尿作用があるので、熱と水分を一緒に排出することができるからだと言われています。
「秋なすは嫁に食わすな」ということわざは、「嫁に美味しいものを食べさせない」という嫁いびりの側面と同時に、「嫁の体を冷やして子どもができにくくなったら困る」ということから来ているという話です。(本当!?)
ともあれ、茄子はビタミンCやアントシアニン(紫色素のポリフェノール)など栄養価も高いですが、反応しやすい人は量を食べ過ぎない、頻繁に食べない、など気をつけましょう。また食べる時は、皮をむいたり種を取ったり、圧力鍋で調理すると、有害成分を減らせるようです。
4.ピーマンやパプリカ
ピーマンやパプリカはサポニン(ステロイドアルカロイド)を多く含みます。それと、緑のトマトや完熟でないトマトもサポニン類を多く含みます。
サポニン類は洗剤のような特性を持ち、微生物や昆虫から自身の身を守るための自然化合物です。
人が摂取すると、サポニン類は腸の壁に穴をあける可能性があり最悪、病原や毒素が血流に入ることを可能にしたりします。
※サポニンは、加熱すると分解するようですから、ピーマンは火を通せばいいんですね。
ピーマンは、独特の苦みがあるので、子供の頃は食べられなかったという人も多いのではないでしょうか。最近のピーマンは品種改良が進んでいるので、昔よりクセが少なくなっていますが、もしかしたら、この苦みはそのアルカロイド(オレは毒だから食べるなよ、という)のせいで、子どもは本能的にそれを避けていただけかもしれませんね。
5.唐辛子やししとう(カプサイシン)
トウガラシのカプサインには様々な健康上の利益がありますが、粘膜への刺激物にもなります。食べすぎると炎症、アレルギー、自己免疫不全などの問題になる可能性があります。
そう言えば、私が昔留学中に知り合ったタイの男の子に辛い物中毒な子がいて、その子はいつもチリ(Chili)の食べ過ぎで顔の吹き出物が治らないと言っていました。。皮膚も、体内粘膜の鏡ですからね(;^_^A
唐辛子を食べると、まず唇がヒリヒリして、口の中が火事になりますよね? あの強烈な刺激が、カプサイシンの特性の一つです。
それは、「物質P」と呼ばれる、痛みを伝達する神経ペプチドの放出によって起こります。しかも、最初に唐辛子などを食べた後、三度、四度と食べるうちにそれほどヒリヒリを感じなくなります。そのため、これは鎮痛剤として変形性関節症の外用薬に使われたりします。
6.タバコの葉(ニコチン)
最後に紹介するアルカロイドは、ニコチンです。ニコチンはタバコに含まれる物質ですが、それもナス科の植物になります。ニコチンの有害性についてはもう周知の事実なので、ここではあまり語りませんが、ニコチンもレクチン同様、植物が自身を守る”農薬”として機能しているようです。
ちなみに、タバコを避けていればニコチンも避けれている、というわけではない、ということを知っておいてください。このアルカロイドは、タバコほどではありませんが、ナス科の野菜すべてに在しています。(2~7mcg/㎏)フレンチフライをケチャップに付けて食べるのが止められない人がいるのは、そういうわけかもしれませんね(;^_^A
7.ゴジベリー(クコの実)
最後に、ナス科の植物として意外なフルーツをあげておきます。クコの実は、栄養価が非常に高く、痩身やシミを取るのに効果的など、巷では「スーパーフード」としてもてはやされているものですが、実際はこれも「ベタイン」というアルカロイドやレクチンが入っていて、大量に食べると良くないようです。
どうでしたか? いろいろと世間で言われていることと反対のことが多くて、混乱させてしまったかもしれません。しかし、これらのナス科の野菜(ナイトシェード)は、大半の人には普通に食べている限り問題ありませんから、ご心配なくー。ただし、なんか調子が悪いという人、自己免疫疾患を持っている人たちは、しばらくこれらの野菜をやめて様子を見てみる価値はあると思います。
最後に、毒と薬は表裏一体。例えば、ゴジベリーに含まれてるアルカロイド(ベタイン)は、消化器系の分泌(ぶんぴつ)や運動を促進して胃腸病の改善に効果を発揮する反面、月経促進や人工中絶薬の作用も持つので、妊婦さんや授乳中の方には要注意ですし、あの滋養強壮のアシュワガンダもナス科の植物です。カフェインも然り。
ですから、何事もほどほどの量にしながら、これらの食べ物とは上手く付き合いたいですね。