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盲腸について

盲腸の隠れた機能

皆さんは、盲腸と聞いて何を思い浮かべますか?

小さい頃から、盲腸と言えば、人間の進化の過程で使わなくなったけど、まだ退化せずに残っている何の役にも立っていない臓器と教えられてきましたよね。 そのくせ、突然激痛を起こして人間を死の危険にさらす厄介なお荷物臓器、と思われている方もまだ多いのではないでしょうか?
ちなみに、調査した500種以上の哺乳類全ての虫垂で“進化による変化”はほとんど見られず、人間も同様でした。これは、“使われる器官は発達し、使われない器官は消失していく”とする「ダーウィンの進化論」に反するのではないか? つまり、盲腸には何か私たちのまだ知らない機能があるのではないか、いうことが長らく議論されてきました。

そうしたら、やはり盲腸(正確には虫垂)には重要なお役目があったのです! 今から10年以上も前ですが、デューク大学(米)の研究者たちによると、虫垂は、善玉菌の貯蔵庫、または避難場所として使われていたことが分かりました。

人の体は、細菌感染による下痢や抗生物質の使用で、悪玉菌だけでなく善玉菌も一掃されてしまうことがありますが、そういう非常事態の時に虫垂は、悪玉菌が腸内を再び占拠してしまう前に、お前たち、行けー!!と貯めておいた善玉菌を放出して、腸内細菌叢の再構築を試みるのです。

研究では、盲腸を取り除いていない人たちは、盲腸を取り除いた人に比べてクロストリジウム・ディフィシル関連下痢症などの感染症からの立ち直りが4倍早いということが分かっています。


また、もう一つ分かった機能は、

虫垂にあるリンパ組織では、腸の免疫機能を維持する上で重要な『IgA』という抗体物質を産生しており、特に病気になりやすい大腸へのIgAの供給を担っていました。

IgAとは、腸などの粘膜免疫を担う抗体物質で、IgAを産生する虫垂を切除すると、大腸へのIgAの供給が減り、長期的に見ると大腸の腸内フローラが悪化する可能性があります。
また、虫垂の切除で炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)になりやすくなる可能性も指摘されています。


【 盲腸について”もうちょぅっと”知ってみよう 】
盲腸は、小腸と大腸の境にある器官で、出口がない行き止まり構造になっているのが特徴です。肉食よりも草食動物の方が発達し、ヒトの盲腸は小指ほどの太さで5~10cm程度なのに対し、他の動物のおよその長さは、

・ウマ … 1m
・ウシ … 75cm
・ウサギ … 40cm
・コアラ … 2m

もあります(;´・ω・) コアラはほ乳類では最長の盲腸を持ち、からだの大きさとの比較ではウサギがダントツに長いです。共通点は「草食」で、彼らは主食が植物でありながら植物繊維・セルロースを自力で分解できません。そこで微生物の力を借りて消化しているのですが、盲腸がその微生物の育成をしていると考えられているのです。

ウサギを飼ったことのある人なら知っていると思いますが、ウサギはコロコロとした糞に交じって時々、ブドウの房のように糞同士がくっついた軟便(盲腸糞)をすることがあります。これを、ウサギはまた食べる! これを「食糞(しょくふん)」と言いますが、これはウサギの具合が悪いわけでも何でもないので、飼い主さんは汚い!などと言って片づけないでください。

ウシには4つの胃があり、口に戻しかみ直しては次の胃に進める反芻(はんすう)をするのは有名ですが、ウサギの盲腸糞もある意味で同じで、一度で分解→吸収できないので2回に分けておこなっている。つまり最初の食事は分解が目的で、いったん糞として出してしまうものの、それを再度食べて栄養を吸収しています。

牛のリバースに対して糞になるのは、胃ではなく盲腸の力を借りている証です。

食糞は、ウサギに限らず見られる行動で、コアラなんかは子に離乳食として自分の糞を与えます。これを人間がしたら児童虐待で通報されそうですが、栄養に加えてママの腸内の善玉菌も取り込めるため、子にとってはこの上ない「ごちそう」なのです。

しかし、では草食動物にとって盲腸が生きていくのに欠かせない器官なのかというと、そうでもないようで、ウサギから盲腸を取り去る実験手術をしたところ、その後も問題なく普通に暮らしていたそうです(^^; ただし、もう食糞はしなくなったそうで、これは食べるに値する糞ではなくなった、ということを意味します。

ですから、結論として盲腸は、胆のう同様「なくても生きれるけどあったほうが絶対ベター」的な器官と言えるでしょう。


さて、虫垂炎は先進国に特に多い疾患ですが、それでは、なぜ盲腸が突然炎症を起こして暴れだすのか?  それは、現代のクリーンすぎる環境と関係があるようです。現代社会では、食中毒も減って善玉菌を貯蔵しておく必要性はそれほどなくなりました。体の免疫系もそういう楽な環境に慣れているところに、たまに菌がワーッと入ってくると、体がそれに過剰反応して、善玉菌の貯蔵されている虫垂まで間違って攻撃するのではないか、と言われています。(自己免疫疾患のように)
ということで、「無用の長物」と思われてきた盲腸は、愛するに値する臓器だった!ということですね。盲腸ちゃん、こんなに縁の下の力持ち的に頑張っていたのに長いことただの厄介者扱いされてきて、可哀相でしたね😢

最後に、消化や免疫、代謝をよくするのにあなたができることーーそれは、庭仕事で手を汚し、プロバイオティクスを摂り、ペットを飼い、冬でも窓を時々開ける!(笑)

もし私はもう盲腸ないよ、という人がいたら、善玉菌を養うことにより神経を注いでください。また、もう盲腸がないあなたの周りの人にも、このことを教えてあげてください。

トンプソン 真理子
在米20年のメディカル・リサーチャー&著作家。「すべての病は腸から始まる」「食で治せない病気は医者でも治せない」と唱えたヒポクラテスを師と仰ぎ、食と健康との深い関わり、大切さについて気づいてもらうべく日々発信している。 得意分野はリーキーガット、代表著書に「リーキーガット症候群」。

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